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トマタマ

スポンサーKataribe

片道10分。永遠に記憶に残る父とのドライブ。

父は車が大好きで、通勤はもちろんのこと、買い物、遠出、と、どこへ行くにも車移動でした。
長時間運転し、家に入って腰をトントン叩いている姿が今も焼き付いています。

小学校低学年の頃、母が風邪で寝込んでしまい、父と2人で食材や生活用品を買いに車で出掛けました。
普段一切家事をしない父とスーパーマーケットへ。

黄色いプラスチックのカゴをカートに乗せるのにも一苦労の父。
何処に何があるかもサッパリ分からないスーパーで、
「パパが必要なものを買うからお菓子コーナー見て来ていいよ。」と言ってガラガラとカートを引いて進む父の背中を不思議な気分でながめてました。

母と買い物に行くと、お菓子は5回に1度買ってもらえるかどうかだったため、ウキウキした気持ちでお菓子コーナーへ歩いて行ったのを覚えています。

たくさんのお菓子を目の前に、幸せな気持ちになってしばらく経った時、父がカートを押してこちらにやって来るのが見えました。

カートを押す手が、しゃがんでいる私からは見えなくなる程の食料品が溢れたカゴの向こうに、父の笑顔があり、

「好きなお菓子入れていいよ。」と言ってくれました。

小さなラムネなどが入った卵型のチョコを渡し、お会計へ。

子供ながらにこんなに沢山食べ物っているのかな、と思いながら、車のトランクに大量の食材が入ったビニール袋を積んでいきました。
全ての荷物が積み終わり、助手席に座ると、いつもの車の中とは違う匂いで車内はいっぱいになりました。

運転席に戻ってきた父の手にはさっき買ってもらったチョコレートと、もう一つ同じものがあり、二つのチョコレートを手渡されました。

「弟の分だよ。」と言われ、自分のことしか考えてなかった自分に、小学生ながらとても恥ずかしい気持ちでいっぱいになりました。

いい匂いがする車の中、父とドライブが始まりました。窓から見える高層ビル群を抜けると、もうすぐ自宅です。
父は運転が上手く、ブレーキもしなやかで、揺りかごのように心地よく、幸せなひとときでした。

車の中で、将来の夢を聞いてきた父。
車の中で、ママの風邪がなかったらドライブできなかったね。と茶目っ気たっぷりで話す父。
車の中で、買いすぎちゃったかなぁと少し心配そうな父。

どの父も、私の記憶の中では横顔で、少しキツイブレーキを踏んだ時には左腕を伸ばし、私の身体を守ろうとしていました。

スーパーから家までたった10分。ドライブとも呼べない程短い時間は、海へ行ったことより、山へ行ったことより、遊園地へ行ったことよりも何故か色濃く記憶に残り、思い返すと胸が少し切なくなります。

大切な思い出をくれた車はもう自宅にはないけれど、写真も撮らない程の小さな思い出だけれど、その分車とセットで鮮明に写真のように心に残っています。

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最終更新日:2016-05-06 20:12

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